私、実はユニコーンガンダムの内容をしっかり理解していないんですよね。
家柄の話が出てきて、人間関係が複雑、それぞれが政治的な理由、動機で行動するからわかりにくい。
そもそも、原作は小説なので登場人物の背景が説明不足になる事はいたしかたないかもしれません。
最近、huluで『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』が見られるようになったので改めて見てみるのもいいかも。
ユニコーンガンダムに登場するビスト財団とその家系
登場人物の背景を理解することで、ユニコーンガンダムの理解にも繋がると思い、ビスト家の人々について調べてみました。
まずは、ビスト財団について。
ビスト財団とは
表向きは、歴史的価値のある美術品を地球よりも環境の安定したスペースコロニーに移送することを業務とする財団法人組織。
しかし、実態はサイアム・ビストが作り上げた、事業や投資で儲けた金を洗浄するためのマネーロンダリングの機関。
連邦政府の官僚を飼い殺しにする天下り先としても機能した。
実態はさらに大きく、政財界の隅々にまで絶大な影響力を持ち宇宙世紀世界を左右する組織に育ってゆくことになる。
ユニコーンガンダムの最後の演説で利用した通信網も、サイアムが「財団の力をもってしても大変だったっす。」といいながらも実際に構築している点から、相当な力を持っている事がうかがえます。
ビスト家 家系図と関わり
ビスト家にかかわる人物を個別でみるより、家系図で見た方がわかりやすい。
というわけで、以下のようになりました。
うわぁ、ドロドロですね。
ポイントは、後述のそれぞれの人物紹介時にも触れていますが、サイアム・ビスト(輪っかのおじいちゃん)と、マーサ・ビスト・カーバイン(妖艶なおばちゃん)がそれぞれ、アナハイム・エレクトロニクスの中心となる人物と結婚する点ですかね。
さて、今度はそれぞれの人物を見てみましょう。
ビスト財団宗主 サイアム・ビスト
ビスト財団の宗主(中心として尊び仰がれる人)。
バナージから見た場合、曽祖父。
頭に光る輪をつけて寝転がっているおじいちゃん。
宇宙世紀0096年においても100歳以上の長命を保って西暦の時代から生き続けている。
ラプラス事件時に、宇宙服で漂った人と同一人物。
若い時のこの感じ、バナージに通ずるところがあります。
画像:オタクな車椅子生活者の日々 ガンダムUC
映像版からでは、サイアム・ビストの背景については、ほとんど語られません。
小説版から確認できる範囲でみてみましょう。
若かりし頃のサイアム・ビスト
貧困から報酬目当てで暗殺に参加した17歳の若者サイアムが確認のため作業艇の外に出るが、直後に作業艇は爆発、サイアムは衝撃で吹き飛ばされてしまう。この爆発は、暗殺をテロリストの仕業に見せかけたい地球連邦保守派勢力による口封じであった。
はい、びっくりしました。
私は小説を読まず、OVA版ユニコーンガンダムを見たので、最初のラプラス事件のシーンはてっきり何かしらの船外活動をしていた時に、爆発に巻き込まれたのかと思っていました。
ラプラス事件のテロ実行犯の一人でした。おじいちゃん。
父はサイアムの少年時代、ゲリラ活動に加わって投獄され、獄中死。
母は病気がちだったとされ、妹にシャーラ(名前の登場と「継ぎのある服を着ていた」との記述がある)がいる。
テロの一味と身元がばれると、家族に害が及ぶと考え決別。二度と母と妹に会うことはなかった。
ラプラス事件後のサイアム・ビスト
ラプラスの爆破で、宇宙を漂っているところを民間船に救助され、地球へ帰還します。
(この時点でラプラスの箱を一緒に回収できたとは思えないけどなあ)
地球へ降り立った後は、死亡扱いとなっていることを利用しながら、裏社会で頭角を現しだします。
やがて、アナハイム・エレクトロニクス社と関係を持ち、役員待遇でアナハイム社内に迎えられたサイアムは、専務の娘と結婚して名門貴族ビスト家の婿養子となる。
おじいちゃん!子殺しまでも!
名家の名前を手にいれ、さらにグイグイいきますサイアムさん。
ラプラスの箱をチラつかせながら、財界や議会にどんどん影響力を与えられるように財団は成長します。
さらに、ビスト財団を守るため、宇宙世紀0051年頃、財団の乗っ取りを計画していた自身の次男(カーディアス・ビスト、マーサ・ビスト・カーバインの父)を交通事故に偽装して謀殺。
原作に『サイアムは多くの子を儲け~(中略)~二男の長子であるカーディアス以外、玉座を譲るに値する人材には恵まれなかった。』
とあり、実際に何人の子どもがいるかは不明となります。
サイアム・ビストの最後
バナージ、ミネバ達にラプラスの箱を託し息を引き取ります。
サイアム・ビストという人物
映像版では語られることのない部分が見えたと思います。
どうでしょうか。
ただ寝転がっている輪っかのおじいちゃんが、非常に頭が切れる人物という事がわかったのではないでしょうか。
ラプラスの箱を利用し、これだけの規模の財団を1世代で成すわけですから相当な切れ者でしょう。
2代目当主 カーディアス・ビスト
サイアムに継ぐ二代目当主。60歳。
サイアム・ビストの孫で、アルベルト・ビスト、バナージリンクスの父。
妹にはマーサ・ビスト・カーバイン。
家の呪縛に囚われる事を嫌い、父の死後(カーディアスが18の頃、祖父のサイアム・ビストに事故を装い殺害される)家を飛び出し地球連邦宇宙軍に入隊。一時期は戦闘機のパイロットになったこともある。
父を謀殺したのが祖父であることに気づき当初は憎みもしたが、父が当主の器ではないことに気づいていたことと、父の死後急速に枯れた祖父の姿を見たため、後継者として完全に任せてもらえなかった父と違い祖父に認めてもらう事を目標に邁進し続けた結果、祖父の意向に従う二代目当主としてその辣腕をふるう。
そして祖父の意思を汲み「箱」を袖付きに引き渡そうとするが、財団の優位性を失う事を恐れた妹マーサの介入により失敗し、彼女の命を受けた実子アルベルトに銃撃される。
その後、バナージにユニコーンを託し爆炎の中に消える。
月の女帝 マーサ・ビスト・カーバイン
カーディアス・ビストの妹。55歳。
サイアム・ビストの孫。アルベルトとバナージの叔母にあたる。
アナハイム・エレクトロニクスの創業者一族であるカーバイン家に嫁ぎ、アナハイムの実質的支配者。
財団とアナハイムと連邦の関係の現状維持を望んでおり、「箱」の開放阻止に奔走する。
インダストリアル7の襲撃も、ラプラスの箱の開示を良しとしない彼女の差し金。
カーディアス・ビストの亡き後は当主代行を務める女傑。
最終手段としてメガラニカを「グリプス2」で消滅させて「箱」の開示を妨害しようとするも、その場に居合わせたロンド・ベル司令ブライト・ノアにより身柄を拘束される。
父殺しの祖父、それをわかったうえで財団を継いだカーディアス等をみて、男社会に憎しみ持っている。
コロニーレーザー発射のシーンで、
アルベルト
「大を生かすために小を……父様がよく口にしていた言葉だ。僕はそれにはついていけなかった。だからあなたの側についたのに……どうしてこうなるんです!?」
マーサ
「……フンッ。 ……!?」
アルベルト
「男の論理を否定し続けてきたあなたが! なぜ!」
というシーンは、こういった経緯がある。
腰ぎんちゃく アルベルト・ビスト
カーディアスと正妻エレンの間に生まれた息子で、バナージの異母兄。33歳。
アナハイム・エレクトロニクス社の重役を務めている。
画像:アニメつぶやき速報‼︎
小説版では、叔母であるマーサと近親相姦関係を結び、彼女の忠実な犬として他者に対しては財団の威光を笠に着る小心者である。
ネェル・アーガマで出会ったバナージが異母弟であることを知った後はユニコーンガンダムを託されたバナージに激しい嫉妬心を抱き、殺意に近い憎悪を向けるようになる。(映像版では描かれていない。)
しかし、映像版では人物像が異なり、鼻持ちならず地に足の着かない小心者というポジション。
バナージに対しても執着なく描かれている。
バナージ・リンクス
カーディアス・ビストの実の息子。
母親はカーディアスが政略結婚した正妻(アルベルト・ビストの母)ではなく、恋愛で結ばれた愛人アンナ・リンクス。
サイアム・ビストは曽祖父にあたる。
画像:あにZねす
財団当主とその愛人との間の私生児として生まれるが、ビスト財団の血縁者が背負うべきその過酷な運命に息子を巻き込ませたくないという母アンナの思いからビスト財団から遠ざけられ、財団にいた頃の記憶を消去された後に母の下で育つ。
U.C.0086年頃、母アンナが病気で亡くなったことで、名も顔も覚えておらず素性すら知らない父親の扶養下に置かれることとなりインダストリアル7に越してくる。
以後、経済的支援を受けつつも、父と直接会うことも、どのような人物かも知らぬままに普通の工専生として生活している。
その後は、劇中で描かれた通り。
第二の主人公 リディ・マーセナスとマーセナス家
第二の主人公というポジションのリディ・マーセナス。
自分の家系に縛られ、運命にあがき、苦しみます。
リカルド・マーセナス
初代首相。
ラプラス事件に巻き込まれ、死亡。
リディ・マーセナスは来孫に当たる。
ジョルジュ・マーセナス
二代目を間に挟んで三代目首相に就任したリカルドの息子。
ラプラス事件の首謀者。
リベラル(自由主義)なマーセナス政権の台頭を嫌った連邦政府極右派が策動し、分離主義組織を裏から煽動して実行させたものであった。
事件の目的は、
・リカルドおよび彼に近しい各国代表を暗殺
・分離主義者にテロリストの濡れ衣をなすりつけて弾圧
・その結果、地球連邦の権限を強める
という、3つの目的を同時に達成するための陰謀であった。
ローナン・マーセナス
リディの父。
リカルド・マーセナスは高祖父に当たる。
地球連邦政府中央議会の大物議員。
ひた隠しにしてきた箱とマーセナス家の秘密を息子に打ち明けることとなる。
リディ・マーセナス
リカルド・マーセナスを先祖に持つ名門政治家一族の家系に生まれる。
ローナン・マーセナスの長男。
劇中では人物描写が飛び飛びな感じで、「あれなんでバンシィ乗ってるの?」とか、「何に怒ってるの?」「誰と戦っているの?」って感じのキャラ。
マーセナス家については、もう少し追記します。
ビスト財団、マーセナス家からわかるユニコーンガンダム
ビスト財団とマーセナス家の背景を知ったことで、とユニコーンガンダム、ラプラスの箱とは何だったのかが、より理解できました。
結果論でしかないですが、仮に早々にラプラスの箱を公表したとしたらどうなったのでしょうか。
ジオンの思想と同じことが記載されていたわけですから。
まあ、それで一年戦争は起こらなかったのかといったら、そうでもないのでしょうね。
ある意味、フロンタルさんが言っていた事が大人な考えでしょう。
「むしろ可能性を閉ざす行為だ。『箱』の秘密は秘密のまま、連邦と取引する材料に使えばいい」